第五顔目(上) 『医療機器の進歩は人間の尊厳を守ることにも繋がります!トイレとか。』(ささち:二分脊椎・統合失調症)

はじめに

「障害者」も一人ひとりが人間だよ、という理解啓発を進めることを目的として解説した本サイトも5人目です。

今回は「One Hundred faces」を読んでインタビューを受けたいと思った!という主婦の方とお話しました。

ささちさんは精神障害と二分脊椎があり、それぞれ深刻な悩みを抱えていますが、家族の支えもありここ数年でやっと前向きに生きていけるようになったそうです。かなり話が盛りだくさんだったので、今回は前後編となります、

多数の困難を抱えながらそれでも生きていく強さを感じていただければ幸いです。

登場人物

ささち

統合失調症で先天性の二分脊椎という病気で内部障害がある37歳の引きこもり主婦。毎日絵を描いていて、ピアノを弾いてます。時々、展覧会などもやります。

くらげ
聴覚障害のあるADHDなおっさん。山形県出身東京都在住。
本サイトの管理人で趣味は人の話を聞くこととコラムを書くこと。
最近、YouTuberデビューしました。
ツイッター 公式ブログ

インタビュー

二分脊椎ってどんな病気?

[く] こんばんは。くらげです。

[さ] はじめまして。ささちと申します。One Hundred facesを読んで、感銘と共に何か揺さぶられるような気持ちになり、私もインタビューを受けたいと思って連絡させていただきました。

[く] ありがとうございます!そこまでいっていただけると管理人としてやる気が上がります!では、早速ですがささちさんの障害と現状について教えていただけますでしょうか?

[さ] 私は統合失調症18年目で、先天性の二分脊椎という病気で内部障害があり、最近精神科でASDの傾向があると言われました。毎日絵を描いていて、ピアノを弾いていて、展覧会などもやりますが、基本引きこもりをしている37歳主婦です。

Ipadで絵を書いているそうです

[く] 二分脊椎ってどんなものでしょうか?

[さ] 先天性の病気で、背中の脊髄神経が奇形や髄膜瘤などを伴って生まれてきます。難病指定されていて、私の場合は一生かけて進行します。人によっては状態が固定することもあり、一括に出来ない難しさがあるんですよね…。

[く] 具体的に何に困っているのでしょうか?

[さ] ずっと困っているのが、排尿と排便が自分でコントロール出来ないことです。係留脊髄という状態で神経がうまく動かないんです。小さいころから漏らして恥ずかしい思いをたくさんしてきました。

[く] なぜ漏らす、とかは子供の頃はあまり理解できない感じでしたでしょうか?

[さ] 両親が私にあまり病気の説明をしない方針だったので、なんでかトイレが近いくらいにしか思ってなかったけど、授業中我慢できないことがたくさんあって、学生の頃はすごく悩んでましたね。大学生になってからは、講義時間が長すぎて、もう何も言わずにトイレ行って戻って講義受けて、みたいになってました。

[く] そういうのはちゃんと早めに説明してほしいですよね、逆に。私も自分が耳が悪いということがどういうことなのか理解したのは中学2年以降で、ADHDに関しては28歳以降なのですが、困り事を理解してからのほうが対処しやすかったので・・・。でも、ご自分で「明らかに変だな」と思えないくらいにはあまり足などが曲がっていないのでしょうか?

普通に見える、という問題

[さ] 全然曲がってないんですよ、見た目はいまでも健常者です。足の変形とかはまだこれから先あるかもしれない、という可能性がある感じですね。足も今は見た目普通なんですが、神経の影響で極端に筋力が出ないんです。50m走のタイムが20秒とか。 小さい頃から運動能力が低すぎて、鬼ごっこ系の遊びが大嫌いでした。チーム組まないといけない系はハブられましたね。

外出用の杖

[く] 一見普通だけど支障が出る、というのは本当に誤解を受けやすくて困りますよね。しかも、進行性、というのはあまり気持ちのよいものではない、というか素直にいって恐怖を感じますよね。私も実は進行性難聴でいつ全く聞こえなくなるかわからないんです。まぁ、人工内耳を入れてその恐怖はだいぶ緩和されましたが。

[さ] 今困ってることは、進行を遅らせる手術をなんとなく勧められているんですが、手術は精神的にも調子を崩すのでどうしたものか、ということです。 前回の手術の影響を受けたメンタルの回復に7年費やしているので、手術の度にそれはしんどいなあと思ってます。

[く] それはしんどいですよねぇ。人工内耳なんかも一度入れた後のリハビリがめっちゃしんどいわけですし、もう一度片方に入れたいかというと・・・。

[さ] でも、手術をしても完治もしないです。それなら無理に手術をしなくても、とは考えます。

[く] 痛みとかはないんですか?

トイレが一番困る

[さ] 現在は痛みがあります。臀部の疼痛でしょっちゅうロキソニン飲んでます。でも、それ以上に一番困るのは、断然、排尿排便コントロールができないことを周りの誰もがピンときてない、ということですね。「事前にトイレ行っておいたら平気だろう」くらいにしか思われない。夫でもあまりちゃんと理解してなさそう。トイレのないところに長時間いるのはとても苦痛です。

[く] トイレのコントロールは老人介護でも問題になっているみたいですよ。パートナーが元老人介護の現場だったのですが、排泄がうまくできなくなると一気に凹む老人が多いそうです。

[さ] 排尿をカテーテルで行なったり、オムツ履いたりして対処してるんですけど、オムツがね、めっちゃくちゃに心理的なハードル高いんですよ。最初、もう履いた瞬間に、絶望的な気持ちになるんですよ…。死にたいくらいに。オムツで用を足すの、心理的にめちゃくちゃキツイんです。理屈で考えれば、オムツ履けば漏れても平気じゃん、と思うかもですが。 福祉系の学校では、「オムツ履いて用を足してみる体験」の授業があるくらいには、メンタルに来るんですよ、オムツ。オムツ履いて外出するのにためらいがなくなるまで1年かかりました。

[く] ご老人でもオムツ履くのをいやがる人はかなりいるそうですよ。ただ、オムツをしっかり使える老人はちゃんと外出も楽しむのでぼけにくい、とパートナーが言ってました。

[さ] それはあるかもしれないですね。確かに、オムツ履きつつ外出できるようになってからは、精神的にもいい具合になっているかも。スッキリしたというか。たくさん歩いて、ダイエットまでしてます。あと、最近、排尿に使うカテーテルが新しくなって非常にコンパクト化しまして、荷物がめちゃくちゃ軽く小さくなって本当に嬉しいです。 医療器具どんどん進化して欲しい!

排尿用カテーテル。たしかに小さい。

技術の進歩に期待する!

[く] 人工内耳なんかも頭に機械を埋め込んで音を聞く技術ですし、この装置もだいぶ小さくなってきています。あと、パートナーがてんかんで倒れることがあるので長距離移動で不安なときは車いすを使うのですが、こいつは折りたたみで13キロしかないので使わないときはたたんで持ち運べます。便利!

[さ] 便利になっていくのはいいですね。そういえば、足の動く間にやりたいことがあるんです。とある山の上にあるお寺さんへ行って、夫の親族のお骨を移動させる、というミッションです。私たちには子供が居なくて、最後に行ってあげられそうなのが私たち夫婦しか居ないんです。 登れるかどうかすでに怪しいですけど、調子が良い時にチャレンジしたいです。それこそ、パワードスーツとか装着して山を登りたい!(笑)そういうのも開発されて欲しいです。人工内耳があるなら、下半身の力を補助するパワードスーツがあってもいいはず…。

まだまだ行きたいところがある、と意気込んでいます

[く] あ、そういう研究、あちこちが研究してますよ。ホンダとかまさにそういう使い方を想定して開発してます。

[さ]  すごい! 実際に販売はしてないみたいだけど夢が持てますね!すごく良さそう。 教えてくださってありがとうございます!

[く] いえいえー。ほんとこういうのはもっと盛り上がってほしいですよ。さて、そろそろ時間なんですが、精神障害や発達障害には全然触れてませんね。

[さ] なんとなくサラリと困りごとを書いたけど、私にとっては身体の困りごとは、うつや統合失調症と比べちゃうと、全然困ってないんですよ。命を落とす病気じゃないので。精神的にくる時もあるけど、統合失調症は地獄、身体は困るかな?程度。ただし手術に限っては地獄。

[く] では、一度切り上げて、次回は精神障害のほうでお話を伺います。よろしくお願いいたします!

[さ] ありがとうございました!次回もよろしくお願いいたします。