第四顔目 『多様性を受け止められる人ってそんなにいないです。だから障害を言わない』(草壁翠:統合失調感情障害)

はじめに

「障害者」も一人ひとりが人間だよ、という理解啓発を進めることを目的として解説した本サイトも4人目となりました。

先日はこのサイトがNHKで放送されたこともあり、多くの方々に読んでいただけました、ありがとうございます。

番組「首都圏ネットワーク」で、これまでに放送した内容の一部がテキストと画像でご覧になれます。

さて、今回は10年来の知人である「みどりさん」にお話を伺いましたが、「障害を理解してほしい」とか「障害受容は大事だよ」という世間の風潮をぶっ飛ばす対談となりました!

障害を理解されないままに生きていくことについてぜひ考えていただけると幸いです!

登場人物

草壁翠(くさかべ みどり)
音ゲーマーなアキバ系の30代。本業は障害者雇用でのデータ分析屋。

くらげ
聴覚障害のあるADHDなおっさん。山形県出身東京都在住。
本サイトの管理人で趣味は人の話を聞くこととコラムを書くこと。
ツイッター 公式ブログ

インタビュー

障害者に取材する態度でねぇぞ!

[く] こんばんは。くらげです。今回は友人のみどりさんにお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

[み] こんばんは。みどりです。今回はよろしくお願いいたします。

[く] で、今日も音ゲーの帰りー?

[み] いきなりフランクですね!?

[く] ネット上で知り合って10年間以上の付き合いですからね、いちいち丁寧に接するのもめんどい。

[み] 障害者を取材するのにありえん態度ですね!まぁ、今日もゲーセンで音ゲーしてきましたけど。

[く] とにかく暇があれば音ゲーしているイメージがありますね。私も一時期ガンシューティングにはまっててゲーセン通いしてたときありますけど、その頃はダンスダンスレボリューションが全盛期でした。もちろんやったことないですけど。

[み] DDRってどんな昔ですか!くらげさん、音感なさそうというかそもそも聞こえが悪いんですよね。ときどき耳が悪いのを忘れてしまうんですが。

[く] 人工内耳で音楽自体は聞こえるんですが、音程やリズム感というものがよくわかっていません。なので、音ゲーが何をするゲームなのかよくわかっていません。

[み] それ、説明します?数時間くらいかかってしまいますけど(笑)

[く] 障害者インタビューサイトが全く別な方向に行っちゃうのでまた別な機会にしましょう(笑)さて、みどりさんの障害はなんでしたっけ?

障害者になったという実感について

[み] 友人の障害を忘れないでくださいよ!手帳上は「統合失調感情障害」となっていますね。発達障害があるかもだけど診断はもらっていません。

[く] 友人の大多数がなんかしら障害や病気があるので混じってしまうんですよ・・・。統合失調感情障害と診断された経緯を話してもらっていいですか?

[み] 私は中学生までは成績がよかったんですが、高校時代でかなり難しくなり、大学で勉強についていけなくなって、学校にいけなくなってしまいました。それで親に隠れて受診したんです。そこで統合失調感情障害と診断されました。医者からは精神障害者手帳を申請できるというので手続きをしたら手帳が発行されました。いまでも常時倦怠感があるし妄想や幻覚がひどいときもあるし、死にたい気持ちも強くて大変です。

[く] 大学では何が難しかったんでしょうか?

[み] 受験で力尽きたのもあるのですが、授業の内容が聞き取れなくて困りました。今から思えば聴覚過敏の症状などもあったんだと思います。当時は過敏症に対する知識もなくて何に困っているかわかりませんでした。

音ゲーカードとイヤホンとコインケース。ゲーセン行くときの必需品。

[く] 何が大変かすらわからない、自分が大変だ、と気づくまでが一番大きなハードルになりますね、精神障害の場合は。ところで、手帳が発行される前と後ではなにか変わったことがありますか?

[み] 手帳をもらうまでは自分が障害者になるとは思ってなかったのです。でも、昔からみんなでワイワイするのが苦手で一人の方がよかったこともあるので、手帳を取ったときには障害者になったんだなーと。

障害は家族に理解されなくていい?

[く] ところで、さっき親には内緒、と言ってましたけど、今でも親にはカミングアウトはしていないんですよね。

[み] 親には言ってないですね。うすうす気づいているとは思うんですが(笑)昔は学業の面でかなり親が私に期待していたのもあって失望させたくない、という気持ちもありますし、親も信じたくないんじゃないでしょうか。これはこれでバランスが取れているんです。表面上は平和ですし。近いうち、彼氏と同棲するために引っ越し実家を出るのでこのまま特にカミングアウトもせずフェードアウトかなぁ。

[く] あ、同棲決まったんですね、おめでとうございます。彼氏も普通に精神障害でしたね。

[み] はい、そうです。お互いに精神障害があるのはわかっていて、くらげさん夫婦を見習って彼氏をたたき直しています(笑) ※くらげは妻の尻に敷かれています

[く] 彼氏がかわいそうだ(笑)親に障害をわかってほしいとかはないんですか?

[み] うーん、ないですね。あまりわかってくれそうにないし、わかってくれることでメリットもなさそうだし。理解してもらうために労力注ぐならコスプレとか音ゲーしていたい・・・。

[く] そこは普通「親が理解してくれないの(しくしく)」とかいうところですからね!?

[み] いや、本当に「わかりあう」のではなくて「無関心でいてくれてもいい」みたいな感じなんですよ。そうしたほうがトラブルが少ないので。

[く] それも一つの生き方ですよね。仕事でもそうなんです?

多様性を受け入れてくれる人は少ない

[み] 採用自体は障害者雇用ですけど、仕事上で配慮を求めるということもなく、特に障害があります、とも積極的にはいいません。本音を言えば職場でも気楽に理解してくれる人がほしいといえばほしいですが、なかなか難しいですね。

[く] 自分の中で障害を受け入れない、というわけでもないんですよね。

[み] 体調が悪いことが多かったり妄想で大変なことがあるので、そこは間違いなく障害はありますし、それ自体は仕方ないんです。でも、なんとかなっているからなぁ、という気持ちもあるので難しいんですよ。表に出にくい障害はこういうところが大変ですね。障害があるから必ず理解してもらう必要もないのかなーって。

[く] なるほど、私はもう聴覚障害は隠しようもないので「理解してもらう」というのが大前提になるのですが、障害特性の違いですね。

[み] 違いますね-。いま、世の中はダイバーシティとかいいますけど、多様性を受け止められる人って少ないですよ。あえて全員に理解してもらうより、わかってもらえる人にわかってもらえばいいかな。余った労力を音ゲーやコスプレに(二回目)

[く] それはそれで正論やなぁ。私、なんで苦労してこうインタビューして理解啓発を求めるサイト作ってるんでしょうね?そんな労力を使うなら遊んでいたい(笑)

[み] くらげさんはそれが趣味なんですよ。しかたないですよ(笑)ただ、障害者全体については「理解ししなくていいけど排斥もしないで」という気持ちはあります。これはやまゆり園の事件で思ったことなんですけど。

アイデンティティが迷子

[く] うん、必ずしも理解をする努力はしなくていいけど、生きること自体は否定してほしくない、というね。それすら難しいこともありますが。ところで、みどりさんは生きて楽しい?

[み] うーん、音ゲーやコスプレをしている間は楽しいです。それでも「オタク」ではないと思うんですよ。オタクにすらなれなかった感じです。秋葉原がしんどいです。まぁ、歳もあるんですけど。音ゲーも若いのが増えて年齢的にもついて行くのが厳しくなってきた(笑)

[く] 歳はつらいね、ガジェットを買いに行くにも秋葉原が年々おっくうになって通販で済ます頻度が増えてる(笑)でも、そうなるとみどりさんのアイデンティティってどこにあるんでしょうかね?

[み] アイデンティティが迷子です(笑)オタクとしても障害者としても中途半端な感じ。でも生きていけるからいいかなぁ。できる限りゲームしてコスプレして楽しめるだけ楽しんで老いていきたいです。

コスプレで音ゲーに熱中。どこからどう見てもオタクです本当に(略)

[く] まぁ、普通は強烈なアイデンティティとか求めなくても生きていけるんだよね。そういう意味ではみどりさんは普通に生きていきたいだけ、ともいえますね。

障害者を啓発する態度じゃねぇ!

[み] そうかもしれないですね。今回のインタビュー、使えます?(笑)

[く] 十分使えますよ!いつも「理解を!」とか「障害を受け入れてます!」というのも嘘くさいじゃない?

[み] 障害者の理解啓発サイトの管理人あるまじき台詞はいてるよこの人・・・。

[く] たぶん大丈夫です!というところで、今日はありがとうござました!

[み] ありがとうございました!これからゲーセン行ってきます!

[く] 楽しんでー。

編集後記

今回のインタビューをしていて感じたのは「障害者」というものは必ず理解してもらわなければいけない、理解してもらうために行動しなくてはいけない、という意識が私の中に根強くあることでした。

しかし、障害者と言っても人それぞれで、「理解されなくても良い」と生きることを選ぶ人も当然います。むしろ、表面に出てこないだけでこういう覚悟で生きている人が多いのかもしれません。

自分の活動で「刺さる人」は本当に少ない、というのは理解してますが、同時に「興味を持つ必要がない人」とどう接するか、そういう覚悟を問われているような気がしました。

では、今回はこれくらいで。次はどのような「顔」を発見できるのでしょうか?お楽しみにー!

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