はじめに
「障害者も人間だ」ということをコンセプトに様々な障害のある方との対談をまとめるという試みの第一弾です。
先日、私の公式ブログでインタビュイーを募集したところ、ツイッターのフォロワーであるみことさんからリクエストが有りましたので、お話させていただきました。
この方法ですが、ライン通話を利用するのですが、私はUDトークで聞き取りながら質問をするという方法で、かなりまだるっこしいものとなりましたが、長々と付き合っていただいたみことさんに感謝いたします。
では、障害者なんだけど障害に焦点を当てないインタビューをお楽しみください。
登場人物
みこと
札幌に住む受動型のASD(高機能自閉症)。
コスプレとイラストとマッシュアップやリミックスが好きなオタク。
ツイッター
インタビュー
大したことしてない人でも良いんです
[く] さて、初のインタビュー相手はツイッターのフォロワーさんであるみことさんです。
[み] みことです。よろしくお願いします。私はほんとそんなに話せることもないし派手な活動してるわけじゃないんですがインタビューいいんでしょうか?
[く] このインタビューは「障害者も色々な人がいる」ということをメインに雑談していこう、という試みなんですよね。なので、大したことがないって方をむしろメインにしていきたいなと。それに完全に面白くない人って実はそういませんし。
コスプレをするのはASDだから?
[み] では、頑張ってコンテンツ力を発します(笑)私は札幌に住む受動型のASD(高機能自閉症)です。コスプレとイラストとマッシュアップやリミックスが好きなオタクです。
[く] みことさんはいつからは忘れたんですが、私のツイートにリプライ(返信)してくれるようになってやりとりするようになったんですよね。そちらからのアクションのつながりなのであまり受動的、という感じはしないんですよね。
[み] 受動的というのは、趣味のコスプレにも絡んできますが、私は中身がないんですよ。自分が希薄というか。だから外側からの刺激がないと反応もしにくい、ということがあります。コスプレに目覚めたのは小学生の中学年からで、その年代って同級生とかがファッション雑誌に興味を持っておしゃれをし始めます。でも、私はファッションリーダーにまったく興味がなくて。でも、なんの格好もしない、というと「ちゃんとした格好をしなさい」と親に怒られるんですね。ところが、ちゃんとした格好というのが全くわからない。なので当時から好きだったアーティストやバンドが載っている音楽雑誌の写真を真似したんです。そこからコスプレ好きが始まりました。
[く] なるほど。あくまでも本当に好きになったものしか興味を持てないASDあるあるというか。

コスプレをするみことさん。かっけぇ。
[み] ファッションをしたい、という動機が自分の中には薄くて、「きちんとしなさい」と怒られるという圧力が先にあるんです。そういう意味では普段から何かの「コスプレ」をしているものかもしれません。でも、例えば好きなキャラに自分を似せるという意味でのコスプレはすごく落ち着きます。『好きなものに似る様に努力する』と『絶対にブレない自分の核』みたいなものが垣間見える感じが。
コスプレ×音楽?
[み]音楽も同じで、原曲や元ネタがあってそこに手を加える人の数リミックスがあって、その違いを楽しむ事に小さい頃から興味がありました。だから今コスプレOKのそういう音楽イベントを札幌にも増やせないかな、と考えているところです。
[く] コスプレの音楽イベントですか?
[み] 私はもともと関東の方にいたのですが体調不良で療養に(後に障害診断を頂くきっかけも含め)札幌へ引っ越さざるを得なかったんです。私は音楽好きなのでライブもフェスも行ってましたが、友達にはいわゆるウェイ系が怖くてどうしても音イベが駄目なオタク仲間もいて、そうなってくるとオタクだけが集まれるようなコスプレ×音楽なイベントが安心感があって好きでした。なので遊んでるうちに私の中で音楽とコスプレは同時で楽しむものになっていったんです。でも、札幌(地方)に来てみたら原曲系イベントはあってもリミックス系メインってほぼコスプレ無いんですよね。今も探してるんですが。
[く] ASDはリミックスやマッシュアップにも関係するんですか?
[み] マッシュアップやリミックスは大体、まず原曲があってそこに別々な音を混ぜ合わせることで作製しますよね。私は音のカクテル効果が弱くて、ライブとかに行くと、演奏している音楽だけではなくて、観客の歓声や雑音、勝手に頭のなかに流れてくる音楽と交じることが多いんです。純粋にその場の音楽を楽しめない事があって辛いこともあるのですが、観客とステージとの一体感や高まりのリアルをそこに感じたり、全く別な音楽が頭の中で組み合わさって別の曲を聞いてる気分になって楽しいことも多いんです。この感覚を再現してみたくてリミックスやマッシュアップに興味を持ち始めました。音楽のコスプレ?みたいな。
先日のIKZO曲、サンクラに上げました!
Have you heard ‘DIVE INTO YOUR IKZOmix’ by 35t on #SoundCloud? #np https://t.co/Rdi1nTndMo— 35t巴投げ@今週はお絵描き原稿ランド (@mkt_1119) August 12, 2018
[く] カクテル効果というのは騒音の中で一定の音にフォーカスを当てて聞き取るという能力ですが、発達障害があるとあまり聞き分けができない、と言われますね。それを逆手に取って新しい音楽を作ろうと試みるのはとても面白いです。
障害があってもイベントに参加したい!
[み] マッシュアップを作って音楽イベントに参加させてもらえるようになったんですけど、その音源は事前に作り込みます。ADHDっぽいタイプのDJな人達がホントその場で一気にミックス作り上げてくのを間近で見ますが、私は突発的なことに対応しようとするとパニックになるし即興性とか無理です。診断の時のWAISーⅢテストとか私、処理速度IQだけダントツ低いんですよ。頭でアイデア構築は浮かんでも肝心のアウトプットする体がパニックで停止してしまう(笑)
[く] 即時性についてはADHDが完全に優位ですね。でも、ADHDは思いつきが多いのでクオリティーが安定しないという弱点が(笑)
[み] 発達障害者の当事者会でもADHDの人は原稿を準備してこないとかよくありますよね(笑)私はあまり言葉で説明する自信がないので丸っとイラストとかを描いてスライドにしますが「最初から細かいの作るね!」と驚かれます。でも、私からしたら他の人はイラスト無しの言葉説明だけでどう発表できるのか疑問です。
[く] そこはもうノリと能力の違いという…。話を戻すと、コスプレと音楽、というところでそれを組み合わせて地方ではまだ少ないイベントを作りたい、ということですが実際にもう動いているのでしょうか。
[み] 元々自分が主催するつもりはなくて。Webで探したり、痺れを切らしてイベント会場で『リミックス系イベ無いんですか?』と受付で聞いたり(笑)してたら少し主催さんやDJさんと繋がれて。話をしていくうちにこの案に興味を持ってくれる方がいらっしゃって、イベントを開催したい初心者には協力してみたい的な話がちらほらあって今はプレゼン用の企画案まとめ中です。まずは勉強を兼ねてDJとして音楽イベントに参加しています。でも、障害で仕事があまり出来ないので機材や技術的な練習環境を自分で準備できないんですよね。
[く] 障害があるとやりたいことがあっても諦めてしまうことが多いですよね。
[み] 確かに。でも『好きなことができない』ということにも耐え難いんですよ。あと、愚痴ばかりで何もしない、というのも性分に合わないんですね。で、とある音イベで主催さんと話せる機会があってたまたま『iPadがあるならそれでDJアプリがある、それを使って自分でやってみたら?』とアドバイスされて。それを使ってmashupやリミックス音源を作って持っていったのが話の発端になります。何度か実際にiPadで作った音源を流して「面白い!」とお客さんが驚く反応をもらえるのは楽しいです。

DJをするみことさん。ノリノリに楽しんでおります。
[く] そのバイタリティはすごく貴重です。
愚痴にオチを付けるということ
[み] 私は小学生のときに発達障害の疑いがわかってそれから色々ありましたけど、途中でなんか悟り(笑)が来まして…。それ以来我が道を行く!みたいになっていますから。出来ることは楽しみたいですね!
[く] ただ、障害ゆえの大変さってありますよね。割と当たり前のことすらするのがきつい、というか。
〔み〕 予兆のない身体不調はよく起きます。予定を立てても急な体調の悪化でドタキャンしなきゃいけなくなったりするのは申し訳ないです。どうしても行く必要があるときは無理にでも動きますが、そのあと数日動けなかったり。あと、コミュニケーション力を保てる代わりに脳のカロリー消費が激しくて全然太れないしちょっとしたことでガス切れになって動けなくなったりします。そういう辛さはあります。
〔く〕 太れないというと羨ましがられませんか(笑)
〔み〕 よく言われます(笑)でも、糖分が胃に入るとストローで脳まで一気に吸い上げるみたいな勢いで血流ゴゴゴゴ響いてて外の音が遠くなってたりしますよ!それですぐに貧血ですよ!ぶっ倒れますよ!?
〔く〕 どんだけすごい勢いで消費されるんですか・・・。そういう心身の不調が続くと愚痴をはきたくなることもありますよね。でも、みことさんはあまり愚痴をはくイメージはないですね。
[み] 愚痴は当然あります。だからツイッターで愚痴をはくこともあるんですが、どこかで愚痴をユーモアに変えるように心がけています。愚痴を愚痴のままにしておくと周りにも伝播して空気が重くなりますし、なにより笑いでぶっ飛ばすのが自分にも大事かなって。そのあたりはくらげさんも同じだと思います。
[く] 愚痴をどこかユーモアにしないと気が済まない、というのは同じかもしれませんね。さて、この先はこれまで札幌にないイベントを主催したい、ということですが、それはASDがあるがゆえに培った趣味が合わさるわけですよね。
[み] 培ったというか勝手に芽生えたというか(笑)もちろん、私が欲しいやりたいというのはあるのですが、オタクが安心してオタクをしながら音楽も楽しめる、という場は札幌含め地方にはまだ少ないんですね。ASDだからというか一オタクとしてそのような場を作りたい、というのが本音です。
[く] ASDである前にオタクとして、というのがミソですね。障害者であるまえにオタクで、やりたいことがあるから頑張る。それが札幌にこれまでなかった文化を作る。これ、凄いことだと思います。いい話をありがとうざいました。これからもがんばってください!
[み] いやーこれ私がまだ出会ってないだけで案外その文化身近にあるかも知れないですけどね!やってみます。ありがとうございましたー!^w^
編集後記
障害者インタビューの第一弾はいかがだったでしょうか?
以前からツイッターでお見かけしていて「個性のある」と感じていたみことさんですが、改めてお話をすると「ASDゆえの音楽を別な角度から楽しむ」「コスプレを楽しんでいる」というあまりつながりのなさそうなことがつながっているんだな、と感じました。
制限がありながらもどうすれば楽しめるか、と考える姿勢は障害のあるなしに関係なく楽しく生きていく上で不可欠なのでしょうね。
また、「愚痴をユーモアにしないと気がすまない」というところは私と通じるところがあり、私も意外と「愚痴るだけではつまらないな」という性格なんだな、というのを改めて思い知らされました。人の顔を探るにつけ、自分の顔も見つけていく。これはインタビューの醍醐味ですね。
では、今回はこれくらいで。次はどのような「顔」を発見できるのでしょうか?お楽しみにー!